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Our Staff

伊藤 明日佳

文化財調査部調査課 調査員

伊藤 明日佳

2018年入社

インタビュー

Interview

Q. 伊藤さんの役職を教えてください。今はどんな仕事をしていますか?

A. 文化財調査部調査課の調査員です。
いわゆる、発掘調査のとりまとめ役です。発掘調査の計画を立てたり、円滑に作業が進むように現場の作業員さんへ指示を伝えたり、発掘調査にかかる施工管理や安全管理などの仕事をしています。また、お客様や関係機関の方々と調査についてのさまざまな調整を行います。

Q. 入社の経緯を教えてください

A. 私は歴史が好きで、大学では文化財の保存・保護を目的とした学職および技術について学んでいましたが、卒業後は一年ほど文化財とはかけ離れた仕事をしていました。のちに自分の中で大学で学んだ文化財に関する仕事に携わりたいという思いが強くあることに気づき、加藤建設に転職しました。今は、この会社で主に埋蔵文化財を調査する立場で働けていることに誇りを感じています。

Q. 遺跡の調査はなぜ行われるのですか?

A. 遺跡の発掘調査には大きく分けて2種類あります。たとえば私たちが行う遺跡の発掘調査は、道路や住宅などの建設(各種の国土開発行為)によって遺跡が破壊される状況になったとき、建設工事が行われる前に失われてしまうすべての情報を回収し、記録することを目的として発掘調査を行っています。

初めて担当した遺跡

Q. 初めて担当した遺跡について教えてください

A. 初めて現場での発掘調査から報告書作成までかかわった仕事は、府中市に所在する武蔵国府関連遺跡です。この遺跡は奈良・平安時代を中心に、旧石器時代から近世にいたる複合遺跡なのですが、この中でも弥生時代前期や中世・近世の遺構が発見されている低地に立地した遺跡を調査しました。

Q. これはどのような遺構ですか?

A1. この遺構は火葬跡と推測され、時代は中世頃のものと考えられています。遺構からは木を燃やした後に残る炭化材が多量に出土したほか、遺構の壁面は被熱を受けて赤化していました。壁の一部には燃焼効率を上げるため、溝状の掘り込みが設けられている特徴があります。この他に焼けた骨片が多数確認されました(写真右)。人か動物か、何の骨なのかは不明ですが、同様の遺構で銭などの副葬品と考えられる遺物を伴う事例も知られていることから、火葬跡と考えられている遺構です。

A2. これは弥生時代前期の土器が多数出土した遺構です。この写真は土器が重なって出土した状態を撮影したもので、地面を浅く掘りくぼめたところに多数の土器が集中しており、この範囲だけで121 点もの土器の破片が出土しました。これらは同一の個体ではなく、2~3個体の土器の破片が埋められていたものと推測されます。遺構内に堆積していた土壌を分析したところ、イネの籾殻(もみがら)に由来する物質(プラント・オパール)が検出されました。こうしたことや土器の出土状況からこの遺構は弥生時代前期における何らかの儀礼の痕跡である可能性が考えられています。

Q. この遺跡から出土した遺物について教えてください

A1. これは陶器の甕(かめ)の破片です。時代は中世のもので、焼き物で有名な愛知県の常滑(とこのめ)という場所で製作された甕と考えられます。甕の外面には鳳凰と思われる鳥形の文様が陰刻されています。

A2. これは環状石器といいます。環状石器は円盤状を呈し、中央に穿孔がある石器です。弥生時代のものと推測され、具体的な用途は不明ですが、祭祀具の一種といわれています

Q. 初めての現場で大変だったこと、学んだことを教えてください

A. およそ9.5 か月に及ぶ調査は初めての現場にしてはとてもハードでした。
調査面積が広いため、調査区内を移動するだけで体力を消耗していました。また、低地の調査を担当するのが初めてであった為、低地の土壌に慣れるのも大変で、非常に難しかったです。

※写真提供:府中市教育委員会

※引用・参考文献:府中市教育委員会ほか2022『武蔵国府関連遺跡調査報告64』

直近の現場

Q. 最近担当した現場について教えてください

A. 最近の仕事は、武蔵野市に所在する吉祥寺南町一丁目遺跡の発掘調査です。
本調査に先立って実施された試掘では旧石器時代の遺物が出土しましたが、私が担当した本調査では縄文時代中期の土器が多数出土したものの、旧石器時代の遺物は出土しませんでした。建築の設計上、限定的な調査でしたが、周辺では制限なく掘り下げていれば試掘調査同様に石器などが出土する可能性があります。

Q. 作業手順を教えてください

  1. 1調査区の位置を設定します

  2. 2重機で表土を除去し、人力で遺構が確認できる地層を検出して、遺構を確認していきます

  3. 3検出した遺構を堀り、記録していきます

  4. 4遺跡の環境を知るため堆積する土層を観察し、記録します

  5. 5下層の旧石器時代を調査するためローム層を人力で掘削します

  6. 6調査を終えた段階の全景写真(縄文時代)

  7. 7調査を終えた段階の全景写真(旧石器時代)

Q. 初めの頃と比べて、成長したと思うこと、気づいたことはありますか?

A. 以前は知識も経験も無かった為、自分が現場を担当していいのかと躊躇していました。しかしこれまで経験した遺跡の調査を経て全体の流れを一通り経験した現在は、以前より少し自信がついた気がします。大変なことのほうが多かったですし、失敗ばかりでしたが、最初から最後までやり遂げたことがさらに今後の自信につながると感じています。ですが、調査を期間内に終わらせるということに囚われてしまい、調査員が本来気づかなければならないことを見逃していたり、考えられない場面があり、その点は調査員として反省し、次回の課題です。

加藤建設の仕事

Q. 仕事のやりがいを感じるのはどんなときですか?

A. 入社当初は遺物を触っているだけでやりがいを感じていました。今は、一つの現場を任せてもらえた瞬間にやりがいを感じます。

Q. 会社の雰囲気を教えてください

A. 良い雰囲気です。面白い人が多い!個性が強いです。そして優しい人が多い。教えるのが好きな人が多いので聞けば何度でも教えてくれます。

Q. 今後、挑戦したいことはありますか?

A. 今後さらに大きい現場を担当するように声をかけられているのでこれまでの反省を生かして、完璧とはいかなくても、90パーセントの完成度を目指したいと思います。また、遺跡としっかり向き合い、意味のある情報を記録し、報告できるよう日々精進したいと思います。

Q. 将来の仲間に向けてメッセージをお願いします

A. 歴史に生で触れられます!歴史や考古学に興味がある人は、とてもやりがいがある仕事だと思います。

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